日時:11月27日(土) 14時~18時
会場:大阪大学(豊中キャンパス)・ 法経大学院総合研究棟(地階,セミナー室C) 報告1:永野佑子(大阪大学大学院博士前期課程) 「古跡指定に見る台湾の歴史認識とその変容―日本統治時代の建築物を中心に」 【報告要旨】 1982年文化資産保護法が公布され台湾における歴史的建築物等が古跡に指定されることになったが、その条文には「中華文化の発揚」が目的であると明記されていた。翌年に第一級古跡 、1985年に第二級、第三級古跡が指定されるが、条文通りその中に日本統治時代の建築物は一つも入っておらず、その後も1990年代に入るまで同様の状況が続いた。1991年、日本統治時代の建築物として初めて台南地方法院が第二級古跡に指定されて以降、日本統治時代の建築物も古跡に指定されるようになったものの、1998年に至るまで、古跡に指定された日本統治時代の建築物はわずかであり、また日本統治時代の建築物が第一級古跡(1997年以降は国定古跡)に指定されることもなかった。本報告では1998年以前に古跡に指定された日本統治時代の建築物に着目し1991年に第二級古跡に指定された台南地方法院と、1994年に第三級古跡に指定された桃園県忠烈祠(旧桃園神社)の保存運動や古跡指定をめぐる論争や経緯を元に台湾における日本統治時代に対する歴史認識について考察する。台南地方法院をめぐる保存運動は1990年に起き、保存の手段として古跡の指定 が検討され 一度は認められなかったものの翌年古跡に指定された。桃園県忠烈祠をめぐる保存運動は1985年に起きたが当時はその歴史的価値を認めるものの古跡ではないとされ、古跡の指定が検討されることはなく1994年に古跡に指定された。 報告2:渠桂萍(太原理工大学政法学院副教授) 「国家、権力、隠形的支配力:20世紀華北郷村権力主角的社会分層及生成邏輯)」 (*中国語発表、原稿付) 【報告要旨】 清末の“地方自治”以来,村落権力の主役の地位・階層・所属は国内外に多くの論述があるが主要な成果は村の指導者エリートと土豪・ならず者の二大グループについてのものである。 その原因は,プレセンジット・デュアラの洞察に富んだ解釈やこれに反対するフィリップ・ホアン、李懐印らの学者の先行研究の存在であろう。筆者は、これらの先行研究に対し清末の新政から20世紀3、40年代以来、村の行政員のイメージは決して“郷紳”と“土豪”の2つでは単純に描くことのできないものであると考える。本報告では、“エリート”“郷紳”の他にもその社会的地位が、外部の特殊な能力による“能力型”の人材が公職を担い、また普通の貧民も脇役として参加したことを明 らかにする。また20世紀3,40年代には、多くの村が依然として“保護型”リーダーのエリートが公職の役割を担ったことを指摘し、フィリップ・ホアンや李懐印らの解釈とは異なる視点を提出し、国家の圧力と見えない支配力の間の緊張関係から新しい解釈を試みたい。最後に、従来の研究では、単純なマイナス評価しかなされなか った土豪やごろつき達に対し、彼らも村にある種の特別で非日常な“保護”を提供したこと、もし村の暗黙の了解、同意がなければ、彼らの意図は容易に思いどおり にならなかったことを明らかにしたい。 報告3:史桂芳(首都師範大学歴史学院教授) 「詩歌と中日戦争:西南大後方の抗戦詩歌を中心に」 【報告要旨】 中日全面戦争勃発後、多くの知識人が重慶、昆明、桂林等西南大後方に移り住み、時代感覚に富んだ詩歌を創作した。詩歌は抗戦文学の庭の一輪の奇花であり中国近代文学史上に残る重要な一頁であるにとどまらず、中日戦争研究の重要な内容でもある。本文は中日戦争時期の西南大後方の詩歌を考察対象とし西南大後方の詩歌の形成、内容、特徴と作用を中心に分析し、新たな角度から中日戦争を理解するものである。
by yukiko_sakaida
| 2010-11-16 08:45
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