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「友人の皆様へ──日中両国の領土をめぐる紛争を憂慮する中国史研究者の声」のご送付について

友 人 各 位

「友人の皆様へ──日中両国の領土をめぐる紛争を憂慮する中国史研究者の声」のご送付について

寒さなお厳しい中、皆様におかれてはお元気でご研究をお進めのことと拝察いたします。
さて、私たちは、昨年9月以来、日中両国の間にかつて経験したことのない緊張が生じていることを憂慮し、個別的にさまざまな形で意見交換を行ってきましたが、この2月10~12日の間、各自の長年にわたる中国史研究の歩みと最近の日中関係についての所感を、時間をかけて率直に語り合いました。その中で、それぞれの知友である中国の歴史研究者への呼びかけをまとめることとなり、このたび、同封する文章を作成いたしました。ここにeメールで送らせていただきます。
 問題が広くかつ深いだけに、様々なご意見を抱かれると存じます。どうかそれぞれが自由にご検討を加え、お聞かせ下されば幸甚です。
ご研究の進展と更なるご健康を祈念いたします。
     2013年2月23日
久保田文次(日本女子大学名誉教授)
小林 一美(神奈川大学名誉教授)
佐藤 公彦(東京外国語大学教授)
多田 狷介(日本女子大学名誉教授)
狹間 直樹(京都大学名誉教授)
濱島 敦俊(大阪大学名誉教授)   
森  正夫(名古屋大学名誉教授)
            (氏名のアイウエオ順に従いました) 

友人の皆様へ
日中両国の領土をめぐる紛争を憂慮する中国史研究者の声

寒さ厳しい季節ですが、先生にはお元気でご研究をお進めのことと拝察いたします。
日本と中国は親しい友人としての間柄を結んでおり、今後もそのようでありたいと強く願っております。そうであるだけに、今般の尖閣列島をめぐる日中両国間の紛糾と緊張をわたしたちは深く憂慮しております。
わたしたちは、過ちはくり返してはならないと考えております。近代以降、日本と中国は、それぞれの道を歩んできましたが、それは両国間の不幸な関係をはらみながら展開してきました。日本では、軍部・政府が、新聞報道や学術・出版など各方面で情報を極端に統制制限し、国民に一切を知らしめず、ショーヴィニズム(沙文主義。排外的愛国主義)を引き起して侵略に踏み出し、その結末として未曾有の全面戦争に立ち至るという大きな過ちを経験しました。日本国民のみならず、世界各地のすべての国民が、この負の歴史的経験を共有されることを、わたしたちは心から望んでおります。
日中戦争・太平洋戦争後、わたしたち日本人は戦争の反省に立ち、諸国民の公正と信義を信頼して、平和憲法の下に近隣諸国、世界の国々と平和的友好的に交際し、自由と平和を希求しようとしてきました。もちろん、この間に、戦争の処理に十分なる解決がなされたと或いは言い得ないかもしれません。しかしこの数十年間、日本国民が真摯に平和と友好を求めてきたことは歴史的に否定し得ない事実であります。中国の人々が近現代の苦難・桎梏からの解放を求め、苦闘を繰り返されたことは、ここに名を連ねたわたしたち中国史研究者が共有する学問の原点であり、深い敬意を払うとともに、日本がその苦難の歴史に大きな責任を負っていることも明確に認識しています。
わたしたちは、何よりもまず、両国の間の平和と良好な関係は永遠に維持されなければならないと思います。これは近現代の歴史がわたしたちに強く教えるところです。見解の相違はあります。感情の齟齬もあります。しかし、「アジア」の近隣に住む両国国民は、歴史が育くんできた共通の「文化」と各自の「個性」を尊重しつつ、「共存」する未来を共有する意志を持ちうるし、歴史研究者としてそのために努力せねばならない、とわたしたちは考えます。
 わたしたちが憂慮しますのは、対立した現状のまま事態が推移すれば、両国間に狭隘なショーヴィニズムの「対抗状況」が醸成されかねないことです。度重なる戦争の悲惨を経験してきた国際社会は、対立紛争を「武力」によってではなく、平和的に解決する手段として国際平和機構、すなわち国際連合や国際司法裁判所を作るという智慧を示してきました。わたしたちは、無数の失われた生命の犠牲の上に成立した、理性と知恵によって解決するこのシステムの活用の方向を両国は尊重すべきであると考えます。
 忌憚なく語り、議論し、武力を交えることなく、共存を目指して「対話」を繰り返していくこと、それで不十分であれば国際的な解決システムを活用することを両国政府、民間諸団体、および両国国民ひとりひとりに強く訴えたいと思います。未来は腹蔵なく語り尽すことによってのみ開かれます。わたしたちは「理性」と「ことば」のもつ「力」を信じ、歴史を母として互いに平等に平和裡に共存できることを願うものです。
わたしたちは、かねがね、友人各位の高い知性と深い見識を衷心より尊敬してまいりました。わたしたちは、理性的な対話と平和への志向を維持すべく、両国民の反対感情が不可逆的な情況にまで立ち至らぬよう、それぞれの領域において忍耐強く努力し続けることを訴えます。
以上、私たちの拙いメッセージをしたためました。意のあるところをお汲み取り下さるとともに、ご意見がございましたら率直にお聞かせいただきたく存じます。
先生のご研究の進展と更なるご健康を祈念して筆を置きます。 
     2013年2月19日
久保田文次(日本女子大学名誉教授)
小林 一美(神奈川大学名誉教授)
佐藤 公彦(東京外国語大学教授)
多田 狷介(日本女子大学名誉教授)
狹間 直樹(京都大学名誉教授)
濱島 敦俊(大阪大学名誉教授)   
森  正夫(名古屋大学名誉教授)
       (氏名のアイウエオ順に従いました) 


〔中译〕致朋友们:
日本的中国史研究者之声:我们对日中两国围绕领土的纠纷深感忧虑

  虽时值岁寒,却可拜察各位先生正精力充沛地推进着自己的研究。
  日本和中国作为亲近的朋友,结好为邻,我们强烈希望这种睦邻友好关系今后亦能长久地保持下去,也正因为如此,我们对日中两国之间此番围绕尖阁列岛的纠纷和由此带来的紧张关系深感忧虑。
  我们认为,同样的错误不可重犯。近代以来,日本和中国都走过了各自的道路,而两国之间不幸的关系也在这当中孕育和展开。日本经历了重大的历史错误,那就是军部和政府在新闻报道和学术出版等各个方面将信息控制到极端的程度,致使国民对外界一无所知,从而挑起沙文主义(排外的爱国主义),迈出了侵略的一步,作为其结果便是走向空前的全面战争。我们衷心地期望不仅仅是日本国民,世界各地所有国家的国民都能共同拥有这一负的历史经验。
  在日中战争和太平洋战争之后,我们日本人开始反省战争,相信各国人民的公正和信义,在和平宪法下与近邻各国和世界各国和平相处,友好交往,追求自由与和平。当然,在这期间,或许很难说对战争遗留问题的处理获得了充分的解决,然而在这数十年里,日本国民对和平与友好的真挚寻求则是不能否定的历史性事实。中国人民在近现代的苦难和桎梏当中寻求解放,不断苦战奋斗的历史,是我们这些在此文之后联名的中国史研究者共同拥有的学术原点,在对中国朋友们深表敬意的同时,我们也明确认识到日本对那段苦难的历史负有重大责任。
  我们认为,两国之间和平、良好的关系必须永久地保持下去,这一点比什么都重要。这是近现代历史给予我们的强有力的教训。我们认为,见解可有不同,情感可有龃龉,但两国国民是“亚洲”的近邻,应当尊重历史孕育出的共同“文化”和各自的“个性”,以确立共同拥有“共存”之未来的意志,作为历史研究者,我们必须为此而努力。
  我们感到忧虑的是,目前的对立状况倘若延续下去,会导致事态恶化,两国之间极易酿成狭隘的沙文主义的“对抗状态”。几经战争之悲惨的国际社会,显示出不以“武力”而是以和平手段来解决对立与纠纷的智慧,创建了国际和平机构,即联合国和国际法廷。我们认为,活用这一在牺牲无数生命的基础上确立起来的通过理性和智慧来解决问题的系统,应该是值得两国尊重的方向。
 在此,我们向两国政府、各个民间团体和两国的每一位国民强烈呼吁,言而无忌地去讨论,而不夹杂武力,以旨在寻求共存的反复“对话”来解决问题,如果仍不能充分解决则应该活用国际上的解决系统来解决。未来只能通过推心置腹,言无不尽的对话来打开。我们坚信“理性”和“言语”的“力量”,希冀以历史为母,实现互相平等与和平的共存。
  长久以来,我们对各位朋友高度的知性和深广的见识抱以由衷的敬佩。我们呼吁,彼此都在各自的领域继续做出坚韧不拔的努力,坚定不移地保持理性对话与和平意向,以使两国国民的对立感情不至于滑向不可逆转的状态。
谨以上述拙文发出我们的呼吁。有意之处请汲取之,若有不同意见,愿闻实言相告。
谨此,置笔
祝愿各位先生研究精进,身体健康!
              2013年2月19日
久保田文次(日本女子大学名誉教授)
小林 一美(神奈川大学名誉教授)
佐藤 公彦(东京外国语大学教授)
多田 狷介(日本女子大学名誉教授)
狭间 直树(京都大学名誉教授)
滨岛 敦俊(大阪大学名誉教授)
森  正夫(名古屋大学名誉教授)
(姓名按顺五十音顺序排列)
by yukiko_sakaida | 2013-03-12 19:05 | 学術交流
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